2023年度中央大学法科大学院ガイドブック
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修了生からのメッセージ法文書づくりのテクを盗む中央大学法科大学院 26公法の中でも主として憲法分野の主要判例を読み込むのが「公法総合II」です。『判例トレーニング憲法』(信山社)という教科書の、少なくとも3分の2くらいを、問題演習を織り込みながら15回の授業で読み解いていく作業をします。判例を読むことは、二つの意味があります。まずは、知識の吸収です。日本は成文法の国といわれますが、実務家にとって判例は、法令と並んで最も重要な法源です。判例の知識なしにローヤーの仕事が務まることはあり得ません。次に、判例は法文書を作成するうえでの一つのお手本だということも重要です。判例を丁寧に読むことによって、法文書を作成するうえでの必須スキルを獲得することができます。授業は、質疑応答を交えて進行しますから、予習・復習の負担は軽いものではありませんが、判決文をよく読みノートを作るという愚直な勉強が、実力の涵養につながると思います。新技術等効果評価委員会(内閣官房)委員長、東京都子供・子育て会議委員、松井証券社外取締役、東電HD社外取締役などを歴任。この講義は、基本的人権に関する特に重要な判例を軸に、事案の分析や関連判例との対比を行うことを通じて、憲法の解釈適用によって法的紛争を適切に解決する能力を養うものです。毎回扱う判例について予習をしますが、講義で他の学生や教員と議論を交わすことで、予習や自学自習では気づけなかった法的構成や事実の評価に出会えます。憲法・行政法といった公法系科目は、とっつきにくい印象を持ちやすいですが、先生は参考書には書いていない判例のより詳細な事実関係や後日談なども交え、知的好奇心を刺激するような面白い解説をしてくださいます。学生は皆、毎週の講義を楽しみにしており、憲法の学修から逃げずに向き合うきっかけとなっていたと思います。私自身も入学時は憲法が苦手で、どれだけ勉強しても薄い起案しか書けず、憲法を使いこなす日など来るのかと悩んでおりました。しかし、この講義で、憲法の面白さ・奥深さに衝撃を受け、最終的には公法系科目を最も得意とすることができました。メッセージ答案の「パターン」をとにかく覚えたいという法科大学院生の需要に応えて、「違憲審査基準論」とか「三段階審査論」とかが「お受験業界」では花盛りです。しかし、司法試験のような凝りに凝った事例問題となると、事前に記憶できる一般論を答案上にどれだけ再現したところで高い評価を得ることはできないでしょう。実務に就けばなおさらです。判例を読み込むことは、与えられた雑多な情報を処理して筋の通った文章を作るための必須の作業といえるでしょう。 2年次必修公法総合Ⅱ判例を読み込んで、安念 潤司 教授担当教員小澤 瑞生2021年司法試験合格苦手科目から得意科目へ、知的好奇心を刺激された講義

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